私の大好きなアーティストの1人に、篠田桃紅さんがいます。
2015年には「一〇三歳になってわかったこと」という新書もヒットしたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
彼女は書家という枠に留まらず、墨で抽象を描くアーティストです。
「川という字は線が3本、そういう決まりごとの中では自分が描きたいものは描けない」と、文字の制約を離れ、より自由な抽象表現に移行していきました。
抽象は観る人が想像するもので、押し付けがない。作品のタイトルすらも見る人の制約になると言う桃紅さん。
歳を重ねるごとに研ぎ澄まされていく感性にただただ圧倒されます。
私が篠田桃紅さんの作品を初めて目にしたのは30代の頃でした。
リトグラフ作品の色のバランス。
墨の黒、グレー、白や赤。
カッコいいという言葉ではとても言い表せない彼女の作品。
その「字でも絵でもないものを墨を使って表現する」というスタイルには、大きく影響を受けました。
私の作品のテーマには、「インテリアや暮らしと調和する」ということが常にあります。
暮らしの中に言葉があることで、そこから力をもらえます。
ですが、墨と筆で「書」を書くという従来の表現では、現代の生活には調和しません。
もっとモダンに表現することはできないだろうか?とずっと試行錯誤しながら今があります。
アート書?インテリア書?現代書?
私の作品はなんだかどう呼んでもしっくり来ないのですが、絵を飾るように、文字や言葉を日常の中に飾れること。
暮らしを彩る作品をこれからも表現していけたらと願っています。